研究課題
本研究では、情報科学の基礎が離散的構造にあるという立場から、量子情報処理において組合せ論を構築することを目指している。研究計画初年度であった20年度においては、まず量子Bell不等式の最大化問題を半定値計画を用いて解析することを目指して、計算解析と離散構造の両面から研究を進めた。離散構造の最たるものである有向マトロイドについては、その基礎である。Grassmann-Plucker関係式によって、純粋な量子状態において量子もつれを解析できることがわかっており、本研究では有向マトロイドの実現可能性判定問題の研究を進めることによって、数値計算により組合せ的判定が行えることを示し、さらに大規模化対処に有用な知見を得ることに成功した。大規模化の検討を可能にするために、離散構造列挙に関してこれまで未到達の領域に挑戦して列挙実現も行い、そこで得られた成果を今後データベースとして活用するための整備も行った。次に、量子状態の成す空間の連続性を離散化して、これまで計算が困難であった問題に対する解決を目指した研究も進めた。具体的には、従来の1量子ビット(2準位系)の量子通信路容量計算についての研究メンバの既存成果をさらに発展させて、3準位系量子状態の量子通信路の容量を計算するために、量子状態空間で計算幾何の最少包含球アルゴリズムの適用ができることを基礎的性質から証明し、実際に3準位系量子通信路における容量計算に適用した。この方法では、受信量子状態を離散化したレベルで最適な容量が計算可能となり、他の局所改善法に基づく方法では最適性に関して保証できない課題を克服している。一方で、離散化による計算量増大への対処が今後の課題となっている。他に、表面原子結晶格子構造において隣接原子対を交換を繰り返して所望の特定原子の配置を実現する問題に対して、最適交換操作列を離散最適化と計算幾何の技法で求める方法を与える研究も新たに立ち上げた。以上のように多角的に研究を進める一方で、研究過程で得られた成果について随時国際会議等で積極的に発表を行う活動にも取り組んだ。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (3件)
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