研究概要 |
本年度は,(1)ストリーム暗号のアプリケーション適用時の安全性解析,(2)データ構造の認証・秘匿機能に関する研究を実施した. (1) に関しては,暗号組み込み時に設定されるパラメータである鍵に着目し,相関性をもつ鍵(衝突鍵)を人為的に構成できる新たなアルゴリズムを提示した.なお,衝突鍵に関する研究成果は本研究と三菱電機の研究のみである,さらに提案アルゴリズムを一般化し,衝突鍵の一般的な構成を実現した.既存の三菱電機の結果は本提案の構成の一部になる.本成果により衝突鍵をもつストリーム暗号の特徴を明らかにした. (2) に関しては,以下の成果を得た. (1) P2P (peer-to-peer)システムを仮定し,分散セグメント木と呼ばれるデータ構造を利用して,負荷分散を考慮した,範囲質問を処理できる認証付データ構造を設計した.なお,従来のほとんどの認証付データ構造ではクライアント・サーバモデルを仮定していた.また,P2Pシステムを仮定した認証付データ構造に関しては負荷分散が考慮されていなかった. (2) P2Pシステムにおいて,分散ハッシュ表の実現としてはChordなどが代表的であるが,個々の分散ハッシュ表の特徴を利用して,より効率的な認証・秘匿機能付データ構造を設計するため,分散ハッシュ表への応用が可能な,ネットワーク環境におけるハッシュ連鎖の構成と応用等について研究した.提案したハッシュ連鎖法では,大規模ネットワークにおける効率的な認証が可能になるだけでなく,状況に応じた柔軟なリボケーションが可能になるといった利点がある. (3) これまでに多くの共通鍵認証暗号方式が提案されているが,秘密鍵の漏洩や更新時の再暗号化の効率の観点から,幾つかの代表的な方式の比較を行った.
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