●トップダウンアプローチ(主担当・中島) 非数値的な並列計算に関する知見・経験の計算科学応用への適用例として、前年度に作成した粒子シミュレーションの負荷分散アルゴリズムOhHelpを例題として、ライブラリ構築ツールの基本機能を設計・実装した。まず前年度に定めた19種のAPI関数・手続を22種に拡張し、負荷分散機能と空間分割機能をより充実させ、シミュレーション対象の次元数やOhHelpの利用レベルに応じてライブラリを適合させる機能を実装した。また問題依存性が強い空間分割機能を中心に、分割対象となるデータ構造の表現方法を定め、既存シミュレータに領域間隣接通信および集合通信のための手続呼出を付加するだけで、空間分割シミュレーションが実行できるような実装を行った。さらにこれらの機能を検証するために、前年度に実施したフルパーティクルシミュレーションに加え、粒子・流体ハイブリッドシミュレーションへの適用実験を行い、1024プロセスで最大1056倍の台数効果が得られることを確認した。 ●ボトムアップアプローチ(主担当・岩下) 特定の計算パラダイムを仮定して設計されていたICCG法やマルチグリッド法などに基づくソルバーを、応用プログラムが要求するパラダイムに対応させるための拡張について研究した。具体的にはICCG法を対象として、プロセス/スレッド併用型のハイブリッドプログラミングモデルに基づいたライブラリを開発し、flat-MPIとの比較評価やスレッド並列処理における前処理アルゴリズムの選択効果の評価を行った。その結果、プロセス数/スレッド数のバランスや前処理アルゴリズムと、問題サイズや計算環境の並列度との関係について、有用な知見が得られた。またプロセス並列処理におけるベクトルデータの通信技法や、FDTD法、マルチグリッド法、高速多重極法などの高性能ライブラリ構築についても基礎検討を行った。
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