本研究は、次世代マルチレイヤ衛星ネットワークにおける衛星インターネット通信を対象とし、その基盤技術の確立を目的としている。次世代マルチレイヤ衛星ネットワークとは、広域性や同報性に優れた静止衛星ネットワーク、低遅延で移動端末との接続性に優れた低軌道衛星ネットワーク、あるいはその中間的な性質を持つ中軌道衛星ネットワークなど、軌道が異なる衛星ネットワークの連携協調によって構成される多階層の衛星ネットワークである。今年度は、低軌道と中軌道の衛星ネットワークから構成される2階層マルチレイヤ衛星ネットワークについて、特にそのルーティング技術に関する研究を行った。低軌道及び中軌道それぞれで複数の衛星がメッシュ状のネットワークを構成することで地球全域を2重にカバーするが、これらのネットワークを効率的に無駄なく利用するためには、各レイヤ(層)間でトラピックをどのように分担して配送するかを制御する技術が必要となる。またその際上位のレイヤを経由する通信では遅延が増加することも考慮する必要がある。本研究では、これら2点を考慮したルーティングアルゴリズムを考案し、シミュレーションによりネットワークの利用効率が向上することを確認した。なお、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の協力の下で行った超高速インターネット衛星(WINDS)を用いた基礎実験では、通信遅延の時間変動など測定データの解析を行い、昨年度までに行った各種シミュレーションの妥当性などを確認した。
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