ピアツーピアネットワーク(以下P2P)の実用化と技術的貢献に向けて必要となる高信頼性を、ノードやリンク各々の信頼性を高めるという従来からのアプローチではなく、自律分散的な相互診断と再構築と多重化によってネットワーク全体として確保することを目指し、過去の研究成果も踏まえて、本年度は以下のような成果をあげた。(1)P2Pネットワークの高度化に向け、自律分散的にクラスタを自己組織化する方式について、シミュレーション実験で信頼性も含めて検証した。成果は学術誌論文3編などで公表し、上梓した英文専門教科書にも反映させた。(2)ネットワークも含む分散システム一般について、設計方式および検証方式の高度化を抽象モデリングの方向から考察して従来の関連事例を越える抽象化を進め、成果を学術誌論文1編、国際会議論文4編などで発表した。(3)ネットワークの相互診断と動的再構成について、自律的ネットワーキング(Autonomic Networking)や故障診断理論なども踏まえて方式設計を進め、予備的な実験で実現性を確認した。成果は国際会議論文1編などにまとめた。(4)実地検証および具体的な応用展開に向けた検討を開始した。今後は、プロトタイプ実装によるより詳細な分析と検証、各要素技術の洗練と全体の統合化、実用展開への準備を進める。
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