本年度は既存アルゴリズムの調査、IPモビリティ通信方式の比較、配送方式に関する検討、プロトタイプシステム構築の準備などを以下のとおり実施した。 1.既存のアプリケーションレイヤマルチキャスト配送アルゴリズムに関する調査を行った。特に、配送ネットワークの構築方針について類型化し、配送ネットワークのトポロジー(ツリー状やメッシュ状ネットワークなど)、配送ネットワークの再構築方針とコスト(時間、メッセージ数など)などについて調査した。この調査において、P2P型ファイル転送方式を活用した画像情報配送も有望な方法であり、検討に加える必要があることが判明した。 2.IPモビリティのうちIETFで提案されているMIP6および研究代表者らが提案しているMATを前提とし、新たな移動透過ALM配送アルゴリズムの研究開発を行った。IPモビリティでは、移動先ネットワークへ接続するために移動機器が使用するIPアドレスを何らかの方法により知ることが可能である。移動先のIPアドレスはネットワークトポロジー上の位置情報であるとも言えるため、その情報を積極的に利用することにより移動機器から最寄りの配送可能ノード情報を得るなど、配送ツリーまたは配送メッシュネットワーク構築を効率的に行うことができる方式の提案を行った。 3.平成21年度以降開始する移動透過ALMを実装したプロトタイプ構築の準備として、既存設備を有効に利用しつつ、移動透過通信の実験環境を構築した。実験用中継ノードの設置などを行った上で、映像伝送アプリケーション用のシステムを構築した。また、IPv6上でのみ動作する実装であったMATをIPv4環境でも動作するよう拡張実装を行い、プロトタイプによる性能評価実施の準備を行った。
|