平成21年度までは、IPマルチキャストが使用できない環境を前提として、ユニキャストのみを使用するアプリケーションレイヤマルチキャスト(ALM)について検討した。平成22年度は、移動透過通信方式を用い、ある計算機上で動作している仮想計算機が異なる計算機上へ移行(マイグレーション)する際、外部との通信途絶時間を可能な限り小さくする移行方式を提案し、プロトタイプシステムを試作して評価を行った。さらに、IPマルチキャストが使用できるネットワークに接続した場合はIPマルチキャストを使用し、ユニキャストのみのネットワークに接続した場合はユニキャスト通信によるALM方式を選択可能とする方式を提案した。IPマルチキャストの利用を前提に作成されたアプリケーションは多数存在するため、それらアプリケーションを改修することなく、本提案手法によるALM通信を利用できるようIP層の一部を拡張する方式の詳細設計を行い、プロトタイプの試作を行った。具体的には、まず複数インタフェースを用いてネットワーク切り換え時の通信途絶を吸収する方式を設計し、継続的なマルチキャスト通信を可能とするためにIPマルチキャストとIPユニキャストを併用した透過型マルチキャスト通信手法を実装し、通信継続性などに関する定量的評価を行った。また、試作したプロトタイプシステムを用い動画像伝送による評価実験を行い、提案手法の有効性を示した。
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