研究概要 |
本研究は楽曲に対して個々の音の重要度という観点から音間の従属関係を表した木構造を作成する理論Generative Theory of Tonal Music(GTTM)の計算機上への実装を目的としたものであり,構造を生成するルール間で重みづけのパラメータを付すことにより理論全体の完全な実装を計画している.20年度はGTTMの未実装部分としてタイムスパン木におけるcadential retentionの実装およびプロロンゲーション木の生成を開始した.しかしなから,これらはともに楽曲の和声解析を必要とし,GTTMの原著にはその手法は記載されていない.このためTPSという理論を用い,和音間距離を測り調の同定を行うシステムを設計した.また同時に20年度はGTTMの応用システムにも着手し,メロディモーフィングのシステムを開発中である.これは二つのメロディのタイムスパン木から中間の木構造を数学的に計算し,中間のメロディを生成するものである.またタイムスパン木の安定性という観点からメロディ予測を行うシステムも開発中である.タイムスパン木だけからでは予測に精度を欠くため予測候補の絞り込みを行う精度の高い予測システムを今後実装する.GTTMを自動化するにあたっては選好規則の選択に関して重みづけをすることが主たる発想であった.しかしながら手動による重みづけでは主観性を含み,かつ曲による差異に対してロバストではない.20年度においては重みづけを決定木による統計的手法で改良することに着手し,グループ境界の推測システムを実装した.以上の成果は国内外の学会で報告されている.
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