研究概要 |
今年度は主にタイムスパン木の集合から構成される束の上での旋律の処理に取り組んだ.その成果は以下にまとめられる.(i)モーフィングは二つの旋律からその両方の特徴をもった中間的な旋律を計算機上に生成するシステムである.これまでそのアルゴリズムはややアドホックに定められてきたが,このアルゴリズムがもとの二つの旋律の内挿の範囲内に存在するものであることを数学的に証明した.(ii)タイムスパン木は一つの旋律を素性構造に表現したものであることから,その構造間に半順序をつけることができる.すなわちタイムスパン木の集まり全体は束を形成し,最大共通元(meet)と最小和元(join)を定義することができる.ところが実際の旋律においては音価や音高を許容するような旋律の統合が求められるため,旋律の統合(unification),一方から他方への埋め込み(embed),方向性を特定しない和元(join)計算のパラダイムを提唱した.(iii)I-Rモデルの実装.GTTMのタイムスパン木は動的に解析が進むと同時に生成されるものではないため,音楽の進行という概念には不向きであった.これは従前よりFATTA/ATTAの改良としても課題となっていたことである.今年度は部分的に与えられた旋律から旋律の進行予測を木生成に組み込む試みの一環としてI-Rモデルによる分析を試みた.(iv)その他作曲者の意図を反映するピアノ編曲システムを検討し,将来的にGTTMのタイムスパン木による表現を課題として提案した.
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