研究概要 |
本研究の目的は,テレビ番組やウェブ情報の中から,信頼性の高い情報を,内容の偏りなく動的に組織化・提示し,知識(いわば動的な百科事典)として利活用できる基盤技術を確立することである.具体的には,低信頼度情報の検出技術,コンテンツの組織化技術,ユーザインタラクション技術の各項目に関して,平成20年度は以下の研究開発を行った. 1.低信頼度情報の検出技術については,信頼性が不確かな情報(比較対象)を,自分が基準として考える情報(比較基準)と比較し,比較対象の比較基準に対する位置づけを明示する手法を提案した.具体的には,情報をその要素,分量,重みの組で表し,それらを組成とみなし,組成同士の比較により,比較対象の比較基準に対する一致度を測るものである(特許出願済).本手法により,利用者ごとに異なる観点,価値観に沿った比較が実現でき,比較対象が自分に合った妥当な情報かどうかを判断しやすくなる.数十万件の料理レシピを例としたプロトタイプシステムを開発し,基本的な有効性を確認した. 2.コンテンツの組織化技術については,コンテンツ間の関連性の発見とそれに基づく情報分布の分析手法について研究開発を行った.具体的に,ニュースコンテンツを対象とした話題と視点に基づく情報の分布分析手法や,人物に関する記述や評判情報の分布に関する分析手法を開発し,そのプロトタイプシステムを作成して,提案手法の有効性を確認した.また,コンテンツ間の関係を分析するための因果関係ネットワークモデルとその構築手法についても研究開発を行った.3.ユーザインタラクション技術については,上記2つの要素技術開発を踏まえた上で,応募者らがこれまでに開発したズーミング記述言語の課題整理と,テレビ番組とウェブを用いた動的な百科事典の仕様策定に着手した.以上について,学会発表5件,特許出願1件の成果を上げた.
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