研究概要 |
手指を用いたバーチャル物体の直接操作において,指先を拘束できない疑似反力提示装置を利用する場合には,指先の侵入量が過大になるため,反力を計算するバーチャルカップリング(VC)の出力も過大になる.その結果,シミュレーションが不安定になり,デバイス出力も容易に飽和するため,干渉発生後の反力の変化を提示できなくなる.これらの問題を回避するためには,VCの粘弾性値を小さく設定する必要があり,その結果として様々な問題が生じる. 問題の一つは,把持時や把持物体を置く際の反力の変化がわかりにくくなることによる操作性の低下であり,この問題に対して,被験者にバーチャル物体を把持して置く作業課題を課し,反力変化の微分強調による状態認知支援効果を実験的に検討した.その結果,反力変化の強調により作業時間が短縮され侵入量も減少するなど,作業効率が向上することが確認された. 複数ユーザが共同で物体を操作する際には,互いの手が自由に動かせることにより,VCの値を小さくしてもなおVCが過大な力を発生させ,意図しない把持解消などの問題が発生する.そこで,物体共同把持中の作業者間の手の位置関係を保持するように,計測された実指位置を補正することで擬似的な拘束を実現し,ユーザと物体の間に作用する過剰な力を防止した.また,拘束の発生の認知を支援するため,拘束方向の反力を強調した力覚提示と通常の反力提示を実験的に比較した.2人で物体を把持して運搬するタスク実験を実施したところ,拘束力を強調することで作業性が改善することが確認された.
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