研究概要 |
平成22年度では,創造的問題解決プロセス(発散的思考/収束的思考/アイデア結晶化/評価・検証)において計算機への入力操作や個人活動とグループ活動の相互作用といった要因が与える影響を検証しつつ,その知見に基づき創造的問題解決の各プロセスをシームレスに繋ぎつつ,個人のサイクルとグループのサイクルが両輪となって相互補完しながら発想を高めていく環境の構築に焦点をあて,以下の活動を行った. 1集合知のリサイクルを可能にし,グループでの発散的思考を計算機上で支援するシステムを開発するとともに,その効果を明らかにした.代表的な集合知サイトであるWikipediaのリンク文字列に着目し,一見関係なさそうで関係があるリンク文字列に含まれる関連語を「ゆるやかなヒント」とし,強制連想法を促進する機能を開発した.評価実験により,集合知のリサイクルにより作成されたゆるやかなヒントは従来のシソーラス辞書を用いた方法と比べ,アイデア質の柔軟性,流量性,独自性に対して,高い効果が確認された.さらに,ゆるやかなヒントを拡張するために連想検索エンジンの適用も行った.その結果,文書やリンクの構造を利用した拡張方法よりも,アイデアの質・量ともにさらに向上することがわかった. 2個人の思考をグループ活動の場へ効率的に導入するためのシステムを開発するとともに,その効果を明らかにした.プレゼンテーションを対象とし,参加者からのコメントをリアルタイムに会場前方画面へ提示する情報システムを開発した.開発システムでは発表時間内で聴衆が発表に注意を向けつつ,より多くのコメント投稿を可能にするために,一時的な記憶を支援する簡易なメモ機能と発表者と聴衆が発表ペースを常に気づける機能を備えている.評価実験により,聴衆個人の意見をグループの場への投入において,提案手法は設定時間内で,聴衆の入力負荷なく,より多くのコメントが獲得可能であることを確認した. 3グループKJ法支援システムにおいて,グループによる図解の了解性・可読性を高めるための視覚的編集機能の強化を行った.これにより,従来PC上で編集が必要だった操作が,デジタルペン操作によって実行可能になり,グループによる図解への参与度を高めることを確認した.
|