研究概要 |
本研究は,知識発見の原理の究明と実働化を目指して,特にデータ圧縮技術との関連に着目しながら,理論と応用の両面から研究を展開することを目的とする.知識発見を,ユーザの関心に依存したフィルタリングとデータ縮約のプロセスであるとみなすことによって,非可逆的なデータ圧縮としてとらえ,定式化することによって,その原理を明らかにし,またこれまでに蓄積してきたデータ圧縮技法を効果的に適用することによってその実用性を検証していくことを主たる目標とする.関連する種々の要素技術を含む,下記の4つの研究項目に力点をおく (1)コルモゴロフ複雑性の活用本申請課題において,知識発見の定式化に関して基盤となるのは,アルゴリズム情報理論であり,そこで用いられるコルモゴロフ複雑性と非圧縮性は,それ自身で重要な理論的ツールとして,計算量理論やアルゴリズム理論,形式言語理論などでの活用例が紹介されている. (2)データ圧縮技法とその応用これまでの研究において,我々は,圧縮されたデータを陽に展開することなく,パターン照合したり,繰り返し構造や最長共通文字列を検出するといった,圧縮文字列処理に適した一連のアルゴリズムやデータ構造の開発を行ってきた.本研究においても,それをさらに押し進め,新たな展開を目指す (3)時間限定の条件下での万能人工知能の再定式化M.Hutterによる万能人工知能の定式化は,計算機に無制限の力を許すという仮定がもとになっており,それが故に種々の数学的性質がエレガントに証明されている反面,直接的な実用に結びつかないという欠点があると考えられる.本研究は,計算時間に種々の条件(多項式時間,多項式領域,対数領域など)を課したときの数学的展開を行うことでそのギャップを埋めていく (4)現実の種々の問題への適用と実働化既存の万能人工知能の定式化は,機械学習,帰納推論や統計的意志決定,ゲーム理論などを統一的に記述しようという意欲的なものであり,それはある程度は成功していると言えるが,反面,上述の通り現実的な応用例とは大きなギャップがある.これまでに具体的に取り扱ってきた経験と知見を活かして,その実用性を検証していく
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