研究課題
H21年度では前年度末に導出したBDD(2分決定木)による確率計算および統計パラメータの学習のアルゴリズムであるBDD-EMアルゴリズムをバイオインフォマティクスの一分野である代謝経路のモデリングに適用し、有効性を確認した。BDD-EMアルゴリズムは本研究プロジェクトで開発している確率知識モデリング言語であるPRISMに於ける背反性制約を除くための中核的アルゴリズムであり、任意の率命題論理で記述された確率モデルのパラメータを学習できる.本研究では大腸菌の代謝経路をアブダクション(仮説推論)により実験データから論理的に推論し、可能な代謝経路(仮説)を得た後、それらを確率的命題論理により記述しBDD-EMアルゴリズムに与えることにより、代謝経路の各ステップを表す命題が真である確率を推論した。この確率にもとづき、候補となる代謝経路の確率を計算して最尤のものから順位付けを行ったところ、専門家の目から見て妥当な順に付けを得ることができた。この結果は将来バイオインフォマティクスなどの科学実験を行う際、半自動的に仮説を発見し評価する科学発見の自動化に繋がるものである。一方PRISMの機能強化に関しては、統計的推論で重要な機能を果たすベイズ推論を取り入れる枠組みとして変分ベイズ法を採用し、PRISMの実行メカニズムである命題化計算と組み合わせることにより汎用の変分ベイズ法を実現できることを証明し、論文化した。変分ベイズ法により確率モデリングで重要なモデルの構造探索於けるモデル選択基準である周辺尤度を効率良く計算できるので、PRISMによる確率モデルの構造探索への道が開かれたと言える。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Annals of Mathematics and Artificial Intelligence Vol.54, No.13
ページ: 135-158