研究課題
本年度は平成21年度に引き続き、1)創発計算手法を用いたABM手法の開発、2)エージェント・インタラクション・モデルの開発、3)系統的なパラメタ探索手法の開発、4)妥当性検査手法の開発、5)社会・経済・組織問題へのABMの適用と評価、に取り組んだ。その結果、1)では知的社会シミュレーション用のプラットフォームの開発し、統計分析手法による妥当性検査も行えるようになった。また、2)では社会ネットワークを構成する個々人の中にモノやコンテンツの繋がりを表したもう一つのネットワークを持つ複雑二重ネットワークモデルから、貨幣の創発が理論的・計算機的に説明されることを示した。3)と4)では平成21年度に開発した大規模社会シミュレーションのフレームワーク"Social Macro Scope (SOMAS)"を用いて、逆シミュレーション手法により中国科挙史における成功・不成功の家系の違いを明らかにした。さらに、5)では空間上の繰り返し囚人のジレンマゲームを用いた入札談合問題の説明と防止策の提言、企業組織で観察される「逸脱」と「改善」のシミュレーションによる実証的説明、ソフトウェア産業での技術レベルの推移と企業戦略との関係の説明、行動ファイナンス理論とABMとの融合、さらに人口の移動といった現実社会で見られる現象への適用と評価を行った。これらの成果は、ABMによっていくつかの大規模社会・経済現象が様々な角度から初めて説明が可能になったということであり、今後とも他の現象への適用が見込まれることを示している。
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