本研究では、人間型ロボットが人間と共存する社会環境において本格的に活動する際に起こるさまざまな予期せぬ衝撃に対して、ロボットが自律的に柔軟な回避行動を取り、その安全性を維持することを目的とする。本研究の核となるのは、代表者らが宇宙ロボット研究において独自開発してきた衝撃力を扱う反動零空間法である。予期せぬ衝撃に対して実際に人間が行う回復動作を体系化し、その動作戦略と反動零空間法を融合することによって、新しいリアクション・バランス回復制御法を導く。さらに、動力学シミュレーションと実機実験を行い、その制御則を適用した人間型ロボットを開発、その安全性を実証する。 平成21年度では、モーションキャプチャシステムを用いた実際の人間のリアクション・バランス回復動作の計測・解析から、生体力学分野などの従来研究では考慮されていなかった、新たなリアクションパターンの創出と、それに基づいた人間型ロボットでの自然な回復動作の生成、制御法による実証試験を行い、それらの結果から人間型ロボットのシステム設計・開発手法を提案する基本理論をまとめることに取り組んだ。 また、前年度までに開発してきた動作パターンに対して、人間型ロボットの持つ大きな特徴である身体の動力学的冗長性を活用した新たな二つの動作パターン((1)ankleおよびhip動作戦略においてひざ関節の利用を考慮する動作パターン、(2)開発してきたすべての動作パターンに対して腕の運動の利用を考慮する動作パターン)の生成を検討し、動力学シミュレーションおよび実機を用いた実証試験に取り組んだ。
|