研究概要 |
1. A1野における生理学的測定による聴覚感性の源の探求 音圧スロープ刺激に対するA1神経細胞のスパイク活動を分析した.刺激開始50ms程の早期のスロープに活動する細胞とそれ以後の後期に活動する細胞の反応特性の違いが明らかになった. 2. A1野における生理学応答をもたらす聴覚末梢-中枢系の情報工学的モデル化 前年度までに構築した聴覚モデルについて,モデルパラメータの精緻化を行うことで生理学データとの対応関係を向上させた.また,一部にコンパイラ言語を用いてモデルを再構築することで,実行速度を5倍程度まで引き上げた. 3. 聴覚モデルに基づいた聴覚診断システム・補聴システムの開発 (1) 補聴器システムに関して:前年度までに開発した評価試験方法により,難聴者を被験者として語音弁別検査と感性評価検査の二種類の検査を実施した.それらの結果を総合して検討することにより,線形増幅処理よりも,ラウドネスを補充する振幅圧縮法を施すことにより語音の聴き取りが改善する被験者がいることを確認し,新しい方式の補聴器の有効性を確かめた.また,信号処理アルゴリズムをMePシステムに実装するための基本的な機能の検討を行い,その動作を確認した. (2) シャント狭窄の聴診システムに関して:前年度までに明らかにした狭窄による信号音の物理的特徴について,時間-周波数解析したスペクトル強度をラウドネス処理したものを自己組織化マップに入力することで,診断結果の変化を評価した.ラウドネス処理しない場合は,シャント音の微細な構造が学習されるために複雑な分布が得られたが,ラウドネス処理することで,その複雑さは緩和され,ヒトが感じるシャント狭窄音の分類に類似した分布が得られた.
|