本研究では、工業製品などのデザインが有する形態に対しての人間の快・不快反応を生理指標である脳波によって客観的に評価することができるかどうかについて調査し、この手法の有効性を検証することである。H20年度では、工業製品などについて、形態に対して人間はどうのように評価されているのかについて研究を行った。製品の形態に対しての評価は、形態を見ることによってヒトが受ける刺激から脳内で生起する連想イメージによって大きく左右されていると考えられる。ヒトが言葉の意味に対して、「内包的意味」と「外延的意味」を合わせて理解しているとされている。「月」と言葉に対して“恋・ロマンチック"という月から連想される意味と、“さびしい・寒い"という月の刺激から来る情緒的意味を「内包的意味」というに対し、“月は地球の衛星である"というのは「外延的意味」であるとされている。同様に製品の形態に対しての評価も、形態が有する形態要素からイメージ連想されるイメージ語の「内包的意味」と「外延的意味」である「物理的意味」から評価していると考えられる。「物理的意味」とは、製品の形態要素から発する、形態を表わす言葉、機能を表わす言葉、色彩を表わす言葉、そして表面仕上げを表わす言葉として表現される。「内包的意味」については、「連想的意味」と「情緒的意味」とに分けられる。「連想的意味」とは、製品の形態から比喩として連想されるものであり、甲虫のような、テントウ虫のような、花のようなという表現である。 「情緒的意味」とは、製品の形態の刺激から生起される感情表現であり、楽しい、嬉しい、可愛い、愛らしい、高級な、繊細な、洗練された、安心感のある、といった表現である。 これまの研究から、製品の形態に対しての評価は「連想的意味」と「情緒的意味」に大きく影響されていることが分かった。H20年度の予定された実験について、視点追跡装置(EMR-8B)を導入したが、納品の遅れと納品後の不備が多発したため、この装置を用いた調査は21年度に行う予定である。
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