研究概要 |
2008年度の研究目標は(1)聴覚情報と視覚情報の非同期が対人コミュニケーションに及ぼす影響を確認するために,日本語音声・日本人話者を用いた映像を用いて非同期の閾値を測定することと,(2)2009年度以降の研究に向けて標準的実験環境を整備し,実験装置および測定機器に求められる仕様を確認することであった。非同期閾測定に付いては,日本語音声・日本人話者による市販の映像を用いて,恒常法により非同期の閾値を測定し,映像遅れでは1フレーム,音声遅れでは9フレームという値を得た。この結果は音声遅れと映像遅れで非同期閾値が非対称になるという先行研究と一致し,従来の評定尺度法による測定に加え,より厳密な恒常法を用いた測定でも,非同期閾値の非対称性が確認されたことになる。また標準的実験環境の決定と整備については,帝京大学の実験室に2台の簡易防音機能を有するブースを設置し,本研究に充分な性能を持つコンピュータおよびグラフィックカードを選定して配備した。メディア教育開発センターの実験室にも同様の実験環境を設営した。観察者の顔面位置を固定する顎台や観察距離については,今後とも若干の調整が必要だが,基本的な実験環境の標準仕様を決定することができた。参加者頭部に固定した小型赤外線ビデオカメラと顔面に貼付した小型マーカーを組み合わせることで,発話時の顔面細部の動きを動画像として録画可能であること,その画像をモーショントラッキング・ソフトウェアで分析し数量的データを得ることが可能なことを確認できた。以上2008年度の研究成果は,2009年度以降の研究計画を支障なく進展させられることを保証できた意味で重要である。
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