研究概要 |
本研究では将来期待される脳シミュレータの実現のためにその構成要素となるべきニューロンの数理的モデルを構築することを目的として実験との対応,モデル化,解析ツールの提供という点に焦点を絞って取り組んでいる.5年プロジェクトの前半は基本要素であるニューロンモデルを完全に整備することを目指し,後半に入りその整備が進んだ段階では,ニューロンの局所回路を論じる方向へと梶を切りたいと考えている.初期段階,20,21年度は単一神経細胞モデルの完成を目指している.最近,我々は簡素でパラメータの少ないモデルを提唱し,スイスで行われたスパイク予測の公開コンペにおいて2007年,2008年の2年にわたって連続して優勝を勝ち取った.このモデルの効率化,高機能化に成功し,実験データの変動にくらべて約90パーセントの正しい予測を可能とし,現在,その第一論文を投稿中である.我々の目標は,ニューロンの精密な記述だけではなく,反応特性を縮約記述することにより記述パラメータを最小限にとどめることにもある.脳シミュレータの実現には,パラメータ数低減の努力が不可欠である.この実証的研究を通して,数理モデル研究そのものにも新しい視点がもたらされ,新しい地平が広がると期待される.国際会議においても招待講演を通してモデルの紹介に努めている.
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