研究概要 |
本年度は,まず,多数目的最適化に優越領域最大化アルゴリズムを適用するために,優越領域を複数の線形関数で近似する方法を提案した.提案手法では,参照点から放射状に広がる直線が優越領域の境界に到着するまでの平均距離により優越領域の面積や体積が近似的に計算される.次に,この近似手法を優越領域最大化アルゴリズムに組み込み,近似性能や探索性能および計算時間の評価を行った.例えば,6目的最適化問題に対して,6次元目的関数空間内で優越領域を厳密に計算するためには,40万本の直線を用いた近似と同程度の計算時間が必要である.そのため.数百本の直線を使って近似を行う場合でも,優越領域の計算時間は0.1%程度に減少する.その結果として,近似手法を用いることで,優越領域最大化アルゴリズムの計算時間も大幅に減少する.最も極端な設定として直線を1本だけ用いた場合では,6目的最適化問題に対する優越領域最大化アルゴリズムの計算時間が1/5000に減少した.この場合での計算時間は,NSGA-IIやSPEAなどの計算時間の10倍程度であり,十分に実用可能である,一方.探索性能に関しては,これらの進化型多目的最適化アルゴリズムを大きく上回っている,また,本年度は,優越領域最大化アルゴリズムにより獲得される解集合の特徴に関する研究も行った.具体的には,優越領域の計算に用いられる参照点の位置と優越領域を最大にする解集合の関係を調査した.その結果,目的関数の数が3以上の場合では,目的関数空間内での参照点がパレートフロントから離れると,大部分の解がパレートフロントの端に集まることが確認された.さらに,多数目的最適化問題に対して,進化型多目的局所探索アルゴリズムを適用する場合における問題点を調査し.局所探索のタイミングおよび局所探索を滴用する個体選択の重要性を示した.
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