研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである. 1) 統合型GISにおける自治体部署間情報共有の問題点の明確化 富山県富山市婦中支所(旧婦中町役場),秋田県由利本荘市に調査に赴き,管理担当者へのヒアリングから導入課題の分析を行った.これらの結果から自律分散協調管理の概念を絡めた基幹システムのデータ更新手順を作成すること,最終的に自治体単独で運用できるようにすることが重要であることが明確となった. 2) 災害時に情報システムに求められる機能の明確化 阪神・淡路大震災や中越地震での経験やヒアリングをもとに課題を整理した結果,国・県レベルのシステムではなく,被災者となる住民目線でのアプリケーション開発が重要であることがわかった.これを実現するためには住民と相対する市町村レベルでのシステムにおいて住民との信頼関係を築くためのコミュニケーションに費やす時間を多く確保することにつながる機能が必要であることがわかった. 3) 災害時の自治体部署間情報共有手法の検討 本課題の検討のためには,情報管理責任者である能力が重要となる.自治体でもこのような立場の職員を置くことが推奨されているが,実態が伴っていない現実がある.このため,本課題に関しては遠軽町にて基礎的な認識の共有のためのディスカッションを行うに留まった.手法評価に関しては次年度以降の課題とした. 4) 期限付き空間情報共有手法プロトタイプ開発 期限付きの空間情報共有手法の仕様を作成した.セキュリティの1つの考え方として,鍵をたくさんつけることが重要であると考え,ファイルレベルの暗号化,システムを通してのアクセス制限とともに,データの自動消滅機能を実装することで,鍵を1つ増やすことを考えた.具体的には,データ交換用差分ファイルに有効期限を入れ,時空間管理する情報システムがこの有効期間に応じてデータの消滅処理を行うことで実現する方式である.
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