研究概要 |
電気生理学的アプローチとして視覚探索課題遂行時のウズラの向網膜ニューロンの単一ユニット活動記録を行った.事前にモニター上の点滅する光点を用いて向網膜ニューロンの受容野をマップした上で,標的刺激を受容野内に呈示すると向網膜ニューロンは一過的に応答する.このような受動的な反応以外にも,向網膜ニューロンは受容野内に呈示された標的刺激へ定位する頭部サッケードの直前200msの間,自発的に発火する.逆に,受容野外に呈示された標的刺激への頭部サッケードの直前には,向網膜ニューロンの活動ば抑制されていた.このように向網膜ニューロンは,標的刺激を受容する網膜領域の局所的ゲインを増強させ,能動的視覚探索に寄与していると考えられる.これらの成果を論文にまとめExperimen tal Brain Researchに発表した. 形態学的アプローチとしてDiolistics法を用いた細胞染色装置を開発した.これにより向網膜系の終端であるIO標的細胞の終末の詳細を観測することができる.本年度は装置の開発に留まったが,次年度の研究に向けてこの装置の完成は大きな意義を持つ. 比較認知科学的アプローチとして,鳩を用いて逐次・並列探索課題を学習させ向網膜系の損傷によってその探索能力の変化を比較した.その結果,向網膜系を損傷した個体は周辺視野での探索能力に速度低下が見られることを発見した.探索できなくなるわけではなく,探索の速度が著しく遅くなるということは周辺視野へ注意を振り向ける速度が低下していることを意味し,本研究の目的を直接的に示していることでもあり,大変重要な結果である.
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