研究概要 |
昨年度の主な成果を以下の項目に分けて示す. 1.向網膜系損傷による標的選択の精度低下 動物に文字図形を標的刺激と妨害刺激とした視覚探索を学習させ,向網膜神経核の損傷の効果を調べた.向網膜神経核を損傷した動物では,妨害刺激を同時に提示した場合には探索の正答率が著しく低下した.標的刺激を単独で提示した場合は全く損傷の効果は見られなかったことから,向網膜神経核の損傷は,視覚誘導性行動の標的選択の精度を低下させるということが明らかとなった.鹿児島大学では実験動物としてウズラを用いているが,京都大学との共同研究においてハトについても同様の結果が得られており,向網膜系の機能は多くの生体に普遍的なものであることが示唆された.現在これらの結果をまとめて国際学術雑誌に投稿準備中である. 2.行動中の動物の向網膜ニューロンからの活動記録 サーチコイルシステムを使用した頭部運動の方向検出の精度およびテトロード電極を用いて神経活動の検出精度を高めて,計測を継続している.2009年4月にExperimental Brain Researchに発表した論文の結果に加えて探索課題遂行中の向網膜神経の活動を計測することで向網膜系の機能の詳細を明らかにしていく. 3.向網膜系の網膜内神経回路の解析 DiIによる網膜ニューロンの標識とパルブアルブミン免疫染色を行い,いくつかの双極細胞がもつ内網状層最内層の水平突起の位置がIO標的細胞の終末付近にあることを示した.これらの双極細胞が向網膜系の最終標的細胞である可能性を示した.
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