相互分節化仮説の検証のため、ヒトと小鳥を用いた実験を行った。1)音列分節化の神経機構を解明するため、ランダムな半音を3つ連結した「音単語」を6つ作り、これらをランダムな順番で再生して被験者に提示した。この刺激は、はじめはまったくでたらめな音列に聞こえるが、10-20分すると3つの音が組み合わせになっていることがわかってくる、すなわち分節化ができるという性質をもつ。機能的MRI装置の中で被験者にこの刺激を提示し、分節化の過程で脳のどの部位がどのように活動するかを測定した。結果、刺激提示初期5分程度においては大脳基底核と前帯状皮質が、後期15分程度ではブロカ野が活動することがわかった。この結果から、基底核と前帯状皮質による系列予測の結果が徐々にブロカ野にワードとして格納されるというモデルが構成できる。2)ジュウシマツが音列の規則を理解できるかどうかを検討するため、ジュウシマツの地鳴きを用いてABBまたはAAB規則にもとづく音列を構成した。ジュウシマツの地鳴きはオスとメスで音響構造がことなるので、これを自然なカテゴリーとして利用した。さまざまな個体の地鳴きを使ってこれらの刺激を作り、オペラント条件づけによりABBとAABを弁別する訓練を行った。この訓練は非常に時間がかかったが、これまで4羽のジュウシマツが基準に達し、般化テストを行っている。これまでの結果から、ジュウシマツは音列の中から規則抽出をする能力があることが示唆される。これらの結果を受け、人のイメージング研究で得られた成果を鳥をモデルとした系で神経回路レベルで検討してゆく予定である。
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