研究課題
本研究は、単語と文法の生物学的生成過程についての相互分節化仮説を検討することにある。この仮説は、音の連続的な流れを規則にもとづいて切り分ける能力と、連続的な行動文脈(状況)を規則にもとづいて分節化する能力とが相互に影響しあうことで、漠然とした状況がしだいに明瞭になり部分音列によりラベルづけされるという考え方でわる。本年度はこの仮説を検証するために、1.ヒトを対象とする分節化にともうなう脳活動のイメージング、2.ジュウシマツを被験体とする規則学習の実験と、3.デグーを被験体とする状況分節化と海馬の関連を検討した。1.においては、音列分節化の初期過程で大脳基底核と帯状皮質が活動し、その後運動前野に活動が移動することを確認した。2.においては、AABとBBAの単純な弁別課題をジュウシマツが学習することがわかったが、学習していたのは個々の音韻であり、規則の学習には至っていないことをプローブ刺激を用いて確認した。3.については、海馬損傷を施されたデグーがコミュニケーション障害を持つこと確認し、こうした動物における音声コミュニケーションの変化についてデータ処理を進めている。本年度はこれらに加え、前年度より引き続き執筆していたジュウシマツの音列分節化についての論文を投稿し、審査中であり、ヒトの視覚刺激分節化に関する論文を投稿し受理された。そのほか、音列・文脈相互分節化仮説に関する解説文を2件作成し・投稿し、現在審査中である。
すべて 2009 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)
Neuroscience Research 64
ページ: 185-190
言語の起源と進化:脳・神経科学の立場から(朝倉書店)
ページ: 73-94
http://okanoyalab.brain.riken.jp/pub/wiki/index.php
http://www.brain.riken.go.jp/en/k_okanoya.html