研究概要 |
ベイズ統計学において,無情報事前分布をデータと未知パラメータとの相互情報量の最大化に基づいて構成するという考え方に基づいた多くの研究がなされ,reference priorの理論として発展してきている.一方,相互情報量最大化では適切な事前分布が構成できない問題があり,解決のためには,データと未知パラメータとの相互情報量を最大化するのではなく,未知パラメータと予測したい量とのデータに対する条件付の相互情報量を最大化することが適当であることが,研究代表者により示されている. 本研究では,この事実に基づいて多重性をともなう予測問題について考察し,ベイズ予測分布の範囲で多重性の問題を解決する予測分布が構成できること,ミニマックス性の意味で最良の事前分布が決まること,多重性に代表される困難な問題を解決する最良の事前分布が情報理論的な構成が原理的に可能なことを示した.また,一般には最良の事前分布は複雑になり何らかの近似が必要になるため,各パラメータに共役事前分布であるベータ分布を用いる方法と数値的なアプローチを研究した.特に,2項モデル,多項モデルに対しては,単純な共役事前分布ではなく,階層ベイズモデルや,多数の点(粒子)を用いた分布の表現などにより構成できるより多様な事前分布を用いて予測を改良する方法を開した. また事前分布を設定したときの条件付相互情報量は,解析的に求まらないためマルチコア計算機を用いた近似アルゴリズムの開発に取り組んだ.
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