研究概要 |
本年度は、ヒトの健康を脅かす稀少生起事象の勃発の兆候を早期に検出するための新しい時空間統計モデルの開発を行った。時空間統計モデルとしてはKulldorff(1997,2001)が提案したSpatial Scan Statisticというモデルが世界で利用されている。しかし、申請者らの研究(Tango and Takahashi,2005;Tango,2007)によりそのエンジン部分の尤度比検定統計量に欠陥があり、真の集積領域より数倍から数十倍大きい集積領域を検出してしまう問題点があり、その主な原因として、1)同定された集積領域に含まれる個々の領域の相対リスク(観察頻度/期待頻度)を考慮していないこと、2)リスクの低い領域がリスクの高い集積領域の一部に含まれる確率がゼロではないこと、であることが判明している。そこで本研究では、Kulldorffの提案した統計モデルのエンジン部分である尤度比検定統計量に替わる新しい基準を提案した。それは、従来の尤度比検定統計量の良さを保存しながら周辺のリスクの小さい領域を呑み込まないような制約付尤度比検定統計量を開発した。この研究成果はDublin,Irelandで開催された第24回国際計量生物学会で発表するとともに、雑誌Japanese Journal of Biometricsに掲載された。
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