遺伝子の発現は、転写因子の特定DNA配列への結合とヌクレオソーム構造が凝集したクロマチン構造によって制御されている。本研究では、転写因子のターゲットDNA配列の推定とヌクレオソームの位置推定を同時に行うことによって、アクティブな転写制御領域を推定すること、また、転写因子のターゲット配列の分布とヌクレオソーム位置の分布から、各遺伝子の転写制御機構、共通な転写制御機構をもつ遺伝子間の関係を明らかにすることを目的とする。 我々は、これまでにDNAは塩基配列ごとに異なる力学特性をもつことをシミュレーション計算や立体構造の解析により示した。H20年度は、その力学特性にもとづいて、ゲノム配列の中でヌクレオソーム構造によく適合する塩基配列部位とそうでない配列部位を推定する方法の開発に着手した。推定した結果が正しいかどうか評価するために、これまでに実験的に明らかになっているヌクレオソーム形成していた塩基配列データと比較できるシステム(プログラム)を作成した。これにより、推定結果の表示、また、実験データとの比較がグラフィカルに行えるようになった。推定結果の評価は、次年度に行う。 一般に、転写関連タンパク質のターゲットDNA配列予測では、予測結果に疑陽性が多いのが問題となっていた。本研究のように、ヌクレオソームコア構造を形成していることがあらかじめわかっていれば、その部分は転写関連因子が結合できないと考えられるので、疑陽性を減らすことができ、より信頼度の高いターゲットDNA配列予測が行えるようになる。
|