研究概要 |
遺伝子の発現は、転写因子の特定DNA配列への結合とヌクレオソーム構造が凝集したクロマチン構造によって制御されている。本研究では、転写因子のターゲットDNA配列の推定とヌクレオソームの位置推定を同時に行うことによって、アクティブな転写制御領域を推定すること、また、転写因子のターゲット配列の分布とヌクレオソーム位置の分布から、各遺伝子の転写制御機構、共通な転写制御機構をもつ遺伝子間の関係を明らかにすることを目的とする。 我々は、分子動力学計算結果にもとづいて、塩基配列固有の力学特性を反映したポテンシャル関数を用いてヌクレオソームの位置を予測している。今年度は、このポテンシャル関数の精密化を行った。その結果、構造パラメータの分布をガウス関数近似して求めたこれまでの関数よりも感度よく蛋白質のターゲットDNA配列を予測することができるようになった。また、酵母ゲノムにおけるヌクレオソームを形成しているDNA配列の特徴解析を上記のポテンシャル関数を用いて行った。結果、ヌクレオソームを形成しているDNA配列のエネルギーが低いこと、つまり、このポテンシャルがヌクレオソーム位置予測に使えることを確認した。また、10塩基周期のエネルギーの振動が観測され、特に、CC,CTでそれが顕著であった。このことは、CC,CTが10塩基ごとに出現することを意味している。さらに、エネルギーとDNAのGC含有量に相関があることを見出した。酵母の場合、ヌクレオソームを形成しにくい領域はGC含有量が約0.33であるのに対し、形成しやすいところは約0.41とGC含有量が大きくなっていた。
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