研究課題
目的 : 生物の記憶・学習・想起能力の進化的・系統分類学的発達度合いを実験的に調べる。標準試験として周期的環境変動の複雑さに対する記憶能力を様々な生物種で調べる。それらを統一的に説明するシンプルかつ本質的な数理モデルを構成する。粘菌の事例で成功した振動子集団モデルを基本的枠組みとして用いる。知的能力の進化を数理モデルの分岐構造として理解できるかどうか検討する。本年度は特に以下の項目を実施した。・ ゾウリムシに周期的な温度変化刺激を与えた後の活動性を定量したところ、ゾウリムシ(Blepharisma)は30分前後の周期刺激に対してそれを予測しすること、ならびに記憶し想起できることを発見した。粘菌以外の生物で、しかも原生生物で粘菌同様の時間記憶能があることがわかった。これにより、時間記憶能が広く一般の生物にみられるという可能性が広がった。・ ゾウリムシの反応では、刺激周期のちょうど半分の周期の反応性も見られたが、これは現行の数理モデルでも同様に振る舞うことから、モデルの枠組みの確からしさが示唆された。モデルの拡張として相互作用の極端に弱い振動子間のうなり現象に注目する着想を得た。うなりの周波数は、長いものなら自然に生み出すことができるので、長い時間スケールの周期応答性の基礎物理現象として期待できるため、それらのダイナミクスの基本的性質を解析した。・ アメーバプロテウス、オジギソウ、線虫、ヒドラ、プラナリア、車軸藻、アリ、コオロギで予備実験に着手した。次年度に実施できるめどを立てた。
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Proceedings of International Workshop on Natural Computing (Springer-verlag), PICT 1, 1
ページ: 213-221