目的:生物の記憶・学習・想起能力の進化的・系統分類学的発達度合いを実験的に調べる。標準試験として周期的環境変動の複雑さに対する記憶能力を様々な生物種で調べる。それらを統一的に説明するシンプルかつ本質的な数理モデルを構成する。粘菌の事例で成功した振動子集団モデルを基本的枠組みとして用いる。知的能力の進化を数理モデルの分岐構造として理解できるかどうか検討する。 本年度は特に以下の項目を実施した。 ・周期的な温度・光刺激に対する赤ゾウリムシの予測・想起・記憶行動を確認できた。この現象自体は、昨年度に発見したが、応答性の多様性と揺らぎのため、統計的な確認には困難を要した。粘菌以外の生物で、しかも刺激の種類によらず、いくつかの周期に対して確認できた事は、このような時間記憶能が生物一般へと展開できることを示唆する。 ・生物の情報能力の高さをしらべるために、多目的ネットワーク最適化問題を解かせた。人間の能力を比較するため、関東圏の鉄道ネットワークと性能評価した。粘菌の方が幾分優れている事、そのデザイン方法が生物の適応機構に基づくアルゴリズムであることを示した。 ・アメーバプロテウス、オジギソウ、線虫、ヒドラ、プラナリア、アリ、コオロギで予備実験をすすめた。
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