研究課題
本研究の目的は、光やpH等の各種の入力情報によってナノ構造の形態変化を制御する分子システム構築論の確立である。平成20年度の実施計画では、(1)三次元DNAナノ構造体の構築と(2)光などの外部入力による三次元構造体の制御機構の開発、を目標としていた。まず、(1)に関しては、single・strandタイルという既存の構造体に着目し、このチューブ構造を結合させることで膜状の構造を形成することを試みた。現在、設計プロセスは終えており、電気泳動やAFM等の手法で確認作業を行っている段階である。一方、(2)に関しては、DNAクロスタイルと呼ばれる二次元構造体を対象にDNA構造体の光制御について基礎実験を行った。DNAクロスタイルの結合部分にアゾベンゼンと呼ばれる光応答性の分子を組み込み、紫外光・可視光の照射でタイルの結合が制御できるか否かを調査した。結果として、紫外光の照射によりアゾベンゼンを組み込んだ箇所の結合が不安定になるため、DNAクロスタイルの成長を妨げることが分かった。この結果は、紫外光の照射による分子システムの構造制御が実証されたという意義を持つ。さらに、三次元構造体構築のための汎用的な設計論の確立を目指すため、進化計算的手法によって望ましい反応系を自動設計する試みを行った。対象として、設計が比較的容易と考えられる、酵素を用いないDNA論理ゲートを選択した。結果として、ORゲートに関しては既存のゲートと同様のものが自動設計され、ANDゲートに関しては既存とは異なるゲートが自動設計された。そこで、このANDゲートを化学実験により検証した結果、シミュレーション通りに正しく動作することが確認された。設計されたゲートは簡単なものであったが、コンピュータが自動的にANDゲートを設計したという意味で、分子システムを設計する新しい方法論の確立に成功したと言える。
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The 14th International Meeting on DNA Computing, Lecture Notes in Computer Science 5347
ページ: 11-20
Natural Computing 7
ページ: 371-383