SulfFP1遺伝子は、ヘパラン硫酸の6位の硫酸基を加水分解するエンドスルファターゼをコードし、ヘパリン結合性シグナルの調節に関わる。その生理機能を調べるためにSulfFP1ノッラクアウトしたマウスを作成したところ、外見上大きな異常は見られなかった。しかし、ヘパラン硫酸の組成を調べたところ、野生型マウスに比べてホモマウスで6硫酸を含む二糖ユニットの量が増加しており、確かにSulfFP1遺伝子が成獣脳で働いている証拠が得られた。また、SulfFP1が成体脳で側坐核、基底核、嗅結節、大脳皮質などに強く発現することから、高次脳機能との関連を探るために網羅的な行動解析を行ったところ、一部の行動に異常が観察された。この異常はヒト精神神経疾患と関連する可能性があるため、SulfFP1ノックアウトマウスを用いてこの異常の神経基盤を明らかにしようとしている。まず、抗SulfFP1抗体を用いてウェスタンブロッティングを行ったところ、野生型マウスで検出されるバンドがホモマウスで消失することから、SulfFP1蛋白が作られていないことが分かった。しかしながら、同じ抗体を用いてに免疫染色を行ったを行ったところ、成獣脳では非特異的染色が強く、シグナルを検出することができなかった。輪回しを用いて日内行動量の時間変化を調べたところ、オス、メスとも、野性型マウスとホモマウスで大きな差は見られなかった。また、日内リズムを変化させることが報告されている薬剤を投与して行動量に変化が見られるかどうかを検討したが、遺伝子型の違いによると考えられる変化は見られなかった。
|