マウス視覚野スライス標本を用いて、2/3層の錐体細胞間抑制の特性を解析した。錐体細胞間抑制性シナプス後電流(ip-IPSC)は、錐体細胞の細胞体・近位樹状突起に結合する抑制性シナプス終末を介して発生すると考えられる。その様な結合様式を持つPV(parvalbumin)陽性とCCK(cholecystokinin)陽性の2種類の抑制性介在細胞のどちらのシナプス終末を介してip-IPSCが生じるかを、GABA終末のマーカーであるGAD65/67と錐体細胞の軸索終末のマーカーであるVGluT1とPVまたはCCVに対する抗体による3重免疫組織染色により調べた。その結果、VGluT1陽性終末はPV陽性終末とCCK終末のどちらとも隣接して存在することが分かった。従って、どちらのタイプの抑制性細胞の軸索終末も錐体細胞間抑制に寄与すると考えられる。ip-IPSCには潜時の短くもっぱらカイニン酸受容体が軸索・軸索シナプスを仲介するものと、潜時が長くカイニン酸受容体とAMPA受容体の両者が仲介するものがある。2/3層錐体細胞からホールセル記録し、興奮性シナプス後電流の逆転電位に膜電位固定し、4層においた双極電極で刺激すると、潜時が一定で短い単シナプス性と思われるIPSCが記録される。カイニン酸受容体阻害薬UBP301を投与すると、そのIPSCの立ち上がりの傾きは半分程度に減少するので、IPSCの立ち上がりの部分は、単シナプス性IPSCと短潜時のip-IPSCからなると考えられる。UBP301の阻害作用は可逆的で短時間で洗い流せるので、UBP301を用いることによりip-IPSCの可塑性を調べることが可能となった。この方法で、来年度はip-IPSCの可塑性を調べる予定である。
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