モルモットの大脳皮質聴覚野は霊長類と同様、コア領域と呼ばれる一次野と背尾側野が存在し、それらを取り囲むように、いくつもの小さな領野から構成されるベルト領域が存在する。これまで多くの研究が行われたにもかかわらず、聴覚野の機能は未だにはっきりしない。本研究では、イメージングと電気生理学の手法を用いて、皮質聴覚野の領野間の機能的な違いを明らかにすることによって、それぞれの領野の機能分担を探索することを目的とした。そのためには、定量的な研究が必須である。本年度では、一次野の周波数分解能に特に注目して、情報論的なアプローチを用いて研究を行った。米国のL Loew博士より、最新に開発された電位感受性色素を供与してもらったことにより、高いSN比で一次野全体の活動をシングルショットでイメージングすることができた。それにより、多数のシングルショット計測ができ、情報論的な解析が初めて可能になった。結果、1)一次野の周波数分解はポピュレーション活動によることが明らかになった。2)一次野の活動から計算される周波数分解能はげっ歯類の行動レベルの分解能に近いことが分かった。今後、これらの方法を他の領野に応用し、比較することによって、領野間の聴覚における機能分担を解明していく計画である。一方、ベルト領域は他のモデリティーの皮質と隣接するため、その機能的な役割はモデリティー問の相互作用にある可能性が考えられる。それを検討するために、視覚刺激に対する聴覚野の応答を探索した。その結果、複数の領野において視覚応答が存在することを見出した。今後、モデリティー間の相互作用にぜ、注日して、聴覚皮質領野間の機能負担を解明していく。
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