研究概要 |
大脳皮質聴覚野はげっ歯類から霊長類まで複数の領野から構成されており、それぞれの領野が特定の聴覚機能を担っていると考えられるが、どの領野がどのような機能を担っているかは不明である。我々はモルモットの大脳皮質聴覚野を光イメージングの手法で調べ、新規の領野を含む複数の領野の存在を明らかにした。本研究では、各領野の機能的な特徴を探索することを研究目的としている。昨年度は主に2つの研究成果を得た。1)一次聴覚野において、自発的な活動が見られ、その自発活動に特徴的な時空間パタンが見られることを明らかにした(Saitoh et al.,2010)。特に、純音刺激によって引き起こされる等周波数帯における活動によく似た活動が見られ、その頻度は統計的に有意であることを明らかにした。計算機シミュレーションにより、このような活動はランダムなプロセスでは生じえないことも同時に示した。今回明らかにした自発活動は、一次聴覚野の等周波数帯は機能単位として働き、一つの純音を一つの帯状の領域に表現させる機能をもつことを示唆する。2)一次聴覚野の電気刺激で聴感覚が生じるか否かを行動学実験と一次聴覚野電気刺激実験により、検討した。まず、純音に対して、瞬きするように条件付けを行った。学習成立後、純音の替わりに大脳皮質一次聴覚野へ電気刺激を行った結果、純音刺激の場合と同様に瞬きを引き起こした。このことは一次聴覚野への電気刺激で聴感覚を引き起こすことができることを示唆しており、聾患者への聴覚代行として大脳皮質刺激法の有効性を示唆している。これらの成果に関して現在論文リバイス中である。
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