研究概要 |
我々は,これまでに,両足をそろえてウサギのような歩行をする新規突然変異マウス(ミッフィー変異マウス)の発見,および,その原因遺伝子の同定を通じて,αキメリンというRac特異的不活化蛋白質(GAP)が,エフリンB3-EphA4の下流として運動系神経の軸索誘導に重要な働きをすることを明らかにした。本年度はキメリン蛋白質の機能をより詳細に解析した。主な研究成果は以下の通りである:(1)キメリンにはαとβが存在するがβタイプはどのような性質を持つのだろうか?京都大学の加藤らとの共同研究として,βキメリンの機能を調べた。免疫沈降により,βキメリンもまたEphAと結合することを明らかにした。また,αキメリンと同様,EphAとの結合はEphAのリン酸化活性には依存しないことを明らかにした。EphAと結合したβキメリンは,エフリン刺激に応答してRacを抑制し,細胞移動を制御していることが示唆された。αキメリンとβキメリンは機能的に重複するようである。(2)我々が以前開発したEmx1-Creマウスとαキメリンfloxマウスを交配することにより,大脳皮質特異的αキメリンノックアウトマウスを作製した。現在,そのマウスに関して,歩行などの解析を行っているところである。(3)ミッフィー変異マウス,および,αキメリンノックアウトマウスに関して,小脳学習への関与を調べるため,瞬目条件反射の実験を行ってきた。また,プルキンエ細胞特異的αキメリンノックアウトマウスの作製,解析も行ってきた。
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