研究概要 |
以前、我々は、従来介在ニューロンと考えられていた一酸化窒素合成酵素(NOS)含有ニューロンの一部が逆行性トレーサー実験で高次嗅覚中枢に投射していることを示した。この所見を更に広げるため、逆行性トレーサーフルオロゴールド(FG)を数か所の嗅覚高次中枢に脳定位固定装置を用いて、電気泳動的に注入し、嗅球内で標識されるニューロンを解析した。この実験によりかなり特異的に主嗅球顆粒細胞層で比較的大型のおそらくこれまでdeep short-axon cellsとされてきたニューロン群が標識される場合があることがあきらかになり、その投射部位の特異性の検討をすすめた。これについては、この投射ニューロンの化学的性質も含めてより詳細の解析を継続して進めている。一方、カルシウム結合蛋白calbindinD28k(CB)陽性ニューロンの解析も進め、一部でのCB陽性大型ニューロンの軸索が外側嗅索(LOT)に伸びていることが確認できた。これらのCB陽性大型ニューロンはその樹状突起の構造等から従来、介在ニューロンに含まれるdeep short-axon cellsとされてきたニューロンであると思われる。このことから、NOS含有ニューロン以外でも従来いわゆる介在ニューロンと考えられてきたものに,投射ニューロンが存在することを示した。一方、嗅球後部に存在する前嗅核の解析も進めた。従来から検討しているカルシウム結合蛋白CB、パルブアルブミン(PV)、カルレチニン(CR)に加えて、最近発見されたカルシウム結合蛋白secretagoginの抗体が使用できるようになったので、この4種のカルシウム結合蛋白による細胞構成の検討を開始した。
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