研究概要 |
本年度は、損傷後一定期間を経た脊髄損傷ラットに対する骨髄間質細胞の移植効果を調べた。ラットの脊髄に挫滅損傷を加え、2週間後に損傷部に培養骨髄間質細胞を注入した。細胞移植後8週迄観察して、歩行運動の回復を調べ、脊髄損傷部の組織学的な変化を対照群と比較した。その結果、細胞移植群では歩行評価指数(BBB)が、4〜8週後で9.6〜9.8ポイントであるが、対照群では細胞移植時とほとんど変化なく、4〜5ポイント止まりであった。組織学的には、空洞の形成が対照群に比して1/3に抑制されていた。最も著明な所見は移植骨髄間質細胞の周りに無数の再生軸索が伸長することである。これらの再生軸軸索はシュワン細胞によって囲まれていた。これらの結果は、損傷2週後のラット脊髄損傷において、骨髄間質細胞の移植が軸索の再生を惹起し、歩行運動の回復をもたらすことが明らかとなった。次に、骨髄間質細胞の培養上清に含まれる有効因子の同定を行なった。培養上清をヘパリンカラムに流して、カラムに吸着する物質を塩濃度勾配で溶出し、有効因子の含まれる分画を同定した。効果の判定は、培養1日目のラット海馬ニューロンに対して、生存維持および突起伸長の作用がどの程度あるかによった。またこれとは別に、50KDa, 30KDa, 10KDa, 5KDa,およびそれ以下の分画として有効因子の含まれる分画を決めた。これによって、有効因子の含まれる分画をかなり絞ることが出来た。今後はこれに基づいて、個々の分子を同定して、上記のアッセイ系にかけて、その効果を判定する。
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