研究概要 |
1.細胞移植 亜急性脊髄損傷の治療法の開発のために、ラットで損傷2週後に直接脊髄損傷部に骨髄間質細胞を注入した。ラットの行動は対照に比してBBBスケールで4~5ポイント上がった。免疫組織化学によって、損傷部にはアストロサイトの侵入がなく、代わりに細胞外基質の形成が見られた。注目すべきは、その中を無数の再生軸索が伸びてきたことである。骨髄間質細胞は細胞外基質の増生を促し、同時に再生軸索の伸張を促進させる働きがあると考えられる。移植1週後では、再生軸索は幼若な線維で、やはり幼若なシュワン細胞に囲まれていた。移植後2週以降ではシュワン細胞によって再生軸索に髄鞘が形成された。再生軸索には上行性および下行性線維が含まれていた。一方、骨髄間質細胞は移植1~2週後に消失した。骨髄間質細胞の効果は、細胞が宿主に組込まれることによるのではなく、細胞が何等かの有効因子を分泌することによるものと考えられる。この結果は論文として発表された。これと並行して、同じく亜急性脊髄損傷に対する骨髄間質細胞の髄液経由移植の効果を調べた。髄液経由でも上記と同じ効果が得られた。この事実も、骨髄間質細胞から分泌される有効因子の働きを示唆している。 2.有効因子の解析 骨髄間質細胞から分泌される因子の検索のために、骨髄間質細胞の培養上清を分析した。新生仔ラットの海馬から培養したニューロンをアッセイ系として用いた。骨髄間質細胞の培養上清の中に、海馬ニューロンの生存維持と突起伸長を促進させる因子が含まれていることが明らかとなった。具体的な解析では、プロテインアレイ解析では、NGFβ,VEGF,LIX,MCP-1,TIMP-1が検出された。ELISAでは、IGF-1,HGF,VEGF,TGF-β1が高濃度に含まれていた。しかし、これらの分子の組み合わせによるアッセイでは、どの組み合わせも培養上清と同じ効果を発揮するものはなかった。
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