本年度は、αシヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症)の剖検脳組織ならびにαシヌクレイントランスジェニックマウスを用い、NUB1の動態について解析した。結果は以下の通りであり、概ね順調に計画は進行している。 1) αシヌクレイノパチー脳を用いたNUB1の病態生化学的検討 αシヌクレイノパチーの病変部位ならびに正常対照の凍結脳組織(側頭葉皮質)5mL/g(volume/weight)を、低張溶液、界面活性剤溶液、SDS溶液、尿素溶液を用いて順次溶解し、抽出した各サンプルをWesternblotにより解析した。その結果、レビー小体型認知症では、尿素画分においてNUB1の量が増加していることが明らかとなった。しかし、正常対照と比べ分子量に差が認められないことから、不溶性NUB1がユビキチン化またはリン酸化を受けている可能性は低いと考えられた。 2) αシヌクレイントランスジェニックマウスを用いた病理学的検討 αシヌクレイントランスジェニックマウスを用い、病理学的検討を行ったところ、大脳・小脳・脊髄のシナプス前終末にNUB1の異常蓄積が認められた。このような変化は対照例では認められなかった。興味深いことに、αシヌクレイノパチー患者の海馬でもシナプス前終末にNUB1の異常蓄積が認められ、同部には異常なαシヌクレインが蓄積していることを確認した。現在、症例数および検索部位を増やし、検討中である。
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