昨年度までに、家族性の点突然変異(A53T)を導入したαシヌクレイントランスジェニックマウスならびにレビー小体病(パーキンソン病およびレビー小体型認知症)では蛋白分解酵素であるproteinase K耐性(不溶性)のαシヌクレインが病変部位(大脳皮質、海馬、黒質)の前シナプスに蓄積していることを明らかにした。そこで本年度は、レビー小体病の前シナプスに蓄積している不溶性αシヌクレインとNUB1(Synphilin-1-binding proteinの一つ)の関係を病理学的および生化学的に明らかにすることを目的とした。 NUB1は免疫組織化学的に、レビー小体病ではproteinase K耐性(不溶性)のαシヌクレインが蓄積している前シナプスに共存していた。同様の所見はαシヌクレイントランスジェニックマウスでも確認された。αシヌクレイントランスジェニックマウス海馬の免疫電顕では、NUB1はシナプス小胞に局在していたが、これらのシナプスには異常な線維構造は認められなかった。レビー小体型認知症の凍結脳組織(側頭葉皮質)を用いた生化学的検討では、NUB1と不溶性αシヌクレインが共存していることが示された。 今回、パーキンソン病およびレビー小体型認知症では、前シナプスにおいて異常αシヌクレインが広範に蓄積していた。Kramerらもレビー小体型認知症の前頭葉および帯状回皮質を検討し、proteinase K耐性αシヌクレインが前シナプスに局在することを明らかにしている。また、前シナプスにおける異常αシヌクレインの蓄積は疾患重症度に相関しており、病態との関連性が強く示唆された。興味深いことにNUB1は上述の異常αシヌクレインと同様の染色像を示したことから、NUB1もレビー小体病の病態に関連している可能性が示唆される。
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