研究課題/領域番号 |
20300126
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
松岡 一郎 松山大学, 薬学部, 教授 (40157269)
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研究分担者 |
幸田 敏明 北海道大学, 大学院・先端生命科学研究院, 教授 (20170186)
小林 三和子 松山大学, 薬学部, 助教 (30396329)
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キーワード | 神経疾患 / 細胞周期 / がん抑制因子 / 遺伝子欠損マウス / BRINPファミリー / 神経新生 |
研究概要 |
我々が同定したBRINPファミリーは、神経系特異的に発現する細胞周期抑制因子である。本研究は神経系におけるBRINPファミリーの生理機能と病態における役割の解明を目的とする。本年度は、BRINP1遺伝子欠損マウスの表現型の解析を継続して行い以下の結果を得た。 1. 成体脳におけるBRINP1の発現は広範に認められるが、神経活動に依存して海馬歯状回において特異的に発現が上昇する。BRINP1ホモ欠損マウスでは、神経活動に依存して海馬CA3領域に顕著な神経細胞の変性が観察された。これらより、歯状回で誘導されたBRINP1が苔状線維を介して、過興奮による脆弱性からCA3錐体細胞を保護することが示唆された。成体BRINP1ホモ欠損マウスの歯状回顆粒細胞下層では神経新生が野生型マウスに比べて亢進しており、未成熱な神経細胞が増加していた。またBRINP1ホモ欠損マウスの行動について、運動性の増加、忍耐力・固執性の欠如、さらに極めて低い社会性を示すことを昨年度までに明らかにした(論文作成中)。以上より、BRINP1の欠損が、幹細胞からの神経新生の亢進と神経細胞の分化抑制を引き起こし、歯状回顆粒細胞とCA3錐体細胞間のネットワーク形成と維持が異常になるために、過興奮に対する神経保護作用が機能しないと考えられる。さらにBRINP1の発現異常が統合失調症やADHD等の精神神経疾患の発症に関与することが示唆される。 2. 神経活動の亢進に伴う海馬におけるBRINP1の一過的な発現上昇は、脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現様式と一致しているが、BRINP1の発現誘導がBDNFに依存しないことも確かめられている。さらに興味深いことにBRINP1ホモ欠損マウスにおけるBDNFの発現レベルは野生型に比べて低く、神経活動亢進時に誘導されるBRIMP1はBDNFの産生を介して神経保護作用を示すことが示唆された。
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