Neuropsinは神経活動依存的にフロテアーゼ活性が活性化される細胞外ペフチダーゼである。これまでの研究からEarly phase LTPと密接に関係することが明らかとなってきている。本研究の課題として、(1)neuropsinを活性化するプロテアーゼカスケードの探索、(2)neuropsinの分泌後の動態、(3)neuropsinは2つの異なるSchaffer-collateral回路の同期にどのように働くかという点に主眼を置いて解析してきた。20年度-21年度においてneuropsinを直接活性化するプロテアーゼの特定には至らなかったものの、Neuropsinは分泌スされ、細胞外で神経細胞のペリシナプス領域で巨大な分子複合体を形成すること、さらには海馬ニューロンが活動する際に、Neuropsinとインテグリン、VDCCの受容体・チャネル細胞内シグナル系を駆動することが明らかとなってきた。22年度における大きな成果は、これらのシグナル系に加えて、扁桃体においてEphB2の切断シグナルが細胞内に伝えられ、これが恐怖刺激と連動することが明らかになったことである。このシステムは海馬においても同様なことが行われると推定されるため、つまり、神経ネットワークにおいて伝達されたインパルスは、伝達物質を放出すると同時に後シナプス電位依存的な一連の細胞外ペプチド分解機構を活性化させる。このシステムは後シナプスに電気シグナルを伝えるという従来の考えを超えて、シナプスでの形態変化とシナプス発芽、シナプスリアレンジなどダイナミックな変化をもたらすことが考えられる。
|