研究概要 |
中枢神経系グリア細胞の一種であるアストロサイトは神経活動を支える多様な役割を担っている。一方で、その発生様式については不明な点が多い。特に、一個のアストロサイトが多機能なのか、それぞれの機能を担う多種類のアストロサイト亜集団細胞系譜が存在するのかは興味深い研究課題である。ニューロンやオリゴデンドロサイトの発生は、胎生期に前後軸や背腹軸に沿った位置情報に従い各々の“領域"から特異的に産生されることが我々を含め複数のグループにより明らかにされている。我々は、各“領域"から発生するアストロサイトの生理的・構造的な性質の違いを解析するためにグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)遺伝子座にCre-loxPレポーター合成遺伝子(loxP-nlacZ-loxP-GAP43GFP)をノックインした遺伝子ターゲティングマウスを作製した。Emx1遺伝子座にCreをノックインしたマウス(Iwasato and Itohara;Genesis,38,130-138,2004)との交配によりEmx1を発現する大脳皮質領域神経上皮細胞由来のアストロサイトはGFP陽性/βガラクトシダーゼ陰性、それ以外の由来が予想されるアストロサイトはGFP陰性/βガラクトシダーゼ陽性を示した。我々の作製したマウスが極めて高いCre-loxP遺伝子組換効率を示したことから、アストロサイト亜集団の細胞系譜解析に有用であることが確認された。今後は各領域特異的にCre遺伝子を発現マウス系統と交配することにより、各領域由来アストロサイトの特異的性質を解析する。
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