本研究は社会的隔離が経験依存的AMPA受容体シナプス移行に及ぼす影響を調べるというものであり、本研究費を用いて以下の事が明らかになった。 経験依存的AMPA受容体シナプス移行が社会的隔離によって阻害されるが、この現象はすべて雄を用いて行ったものである。ヒトにおいても男女間でストレスに対する耐性に差があるということがしばしば言われているが、当該研究者は社会的隔離によるAMPA受容体シナプス移行阻害が雌においても見られるか否かを検討した。生後7日から11日まで一日6時間社会的隔離を施し、生後12日から14日の間でのGluR1のシナプス移行を検証したところ、これが阻害されていないことを見出した。このプロトコールでは雄においてはGluR1のシナプス移行阻害が見られた。このことから社会的隔離ストレスには雌雄差があり、雌のほうが耐性が強いということが明らかになった。一方で、生後7日から11日まで一目8時間の社会的隔離を施すと、雌においてもGluR1のシナプス移行が阻害されることも明らかになった。すなわち雌におけるストレス保護作用にも限界があるということが明らかになった。Corticosteroneを正常環境に育てられている雄ラット(生後7日から11日)に投与することによりGluR1のシナプス移行が阻害されることはすでに明らかにしているが、このようなcorticosteroneの効果にも雌雄差があることも明らかにした。簡潔に、雌のほうがより多くの量のcorticosterone投与に対して耐性があり、社会的隔離の効果と同様の傾向があることが明らかになった。
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