小脳皮質と小脳核は、対応する多数の機能区分(小脳モジュール)から構成されると考えられる。本年度は、小脳モジュールの構築を小脳の小葉構造と分子コンパートメントに関連づけて解明する目的で、ラットにおいて、順行性神経標識法とaldolase C免疫染色により、小脳モジュールの最も重要な構成要素となるプルキンエ細胞投射軸索の形態を明らかにし、さらにその投射のトポグラフィーを詳細に解明した(専門誌に発表済み)。この結果、小脳皮質-小脳核間の機能モジュールの構築をシステマティックに決定することができたが、この成果は、次年度以降の小脳モジュールに関するin vitro電気生理学的実験のための解剖学的な基盤として重要である。さらに小脳モジュールの構築の詳細を明らかにするための実験も進んでいる。英国のブリストル大学のApps教授との共同研究として行った、電気生理学的に同定した第8小葉における下オリーブ核・小脳皮質・小脳核間の投射の機能的構築を解明が終了し、現在発表準備中である。橋核と後索核に由来する苔状線維系の小脳皮質・小脳核投射を解析もほぼ終了し、現在発表準備中である。さらに、小脳の各単一小葉への広範な逆向性トレーサー物質の注入による、下オリーブ核、橋核、前庭神経核その他の苔状線維の起始核からの小脳の各小葉への投射パタンのトポグラフィーの解析も進んでいる。これらにより、プルキンエ細胞軸索、苔状線維系、登上線維系の投射パタンを小脳の分子発現パタンと関連させて系統的に解析し、小脳全体におけるモジュール構成の詳細を解明しつつある。
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