研究概要 |
小脳皮質、小脳核および下オリーブ核は、部位対応的に関連する多数の機能区分(小脳モジュール)から構成されると考えられる。これまでにわれわれは、小脳の小葉構造とアルドラーゼCなどの分子の縦縞状発現パタンに密接に関係している小脳モジュールの概要を、ラット・マウス・マーモセットにおいて明らかにしてきている。本研究は小脳モジュールの構築と基本動作機構を明らかにすることを目的としている。本年度は研究実施計画の項目4の小脳投射ニューロンと小脳モジュールの構築との関係に関して特に大きな成果が得られ、J.Comp.Neurel.に発表した。その内容は、小脳への主要な入力である苔状線維と小脳モジュールとの関係に関するものである。機能の分かっている苔状線維が小脳モジュールに対してどのような関係で入力するかを明らかにすることが小脳モジュールの構築と基本動作機構の理解につながる。本研究において、上肢・体感・下肢等の異なる体部位からの触覚と深部感覚の中継核である後索核から小脳への投射軸索の形態を再構築によって明らかにした。投射パタンは体部位局在および感覚種によって異なり、それぞれの線維は、幾つかの体性感覚に関係する特定のモジュールに投射することが明らかになった。これにより、個々のモジュールが異なる体性感覚機能に関わることが明らかになり、かつ、どのモジュールの組み合わせがどの感覚に関わるかが示された。その他の研究実施計画についても進めており、特に、縦縞模様状にマーカーが発現している2種類の遺伝子改変マウス(1NM13,Aldc-Vns)を用いた解析結果に関して現在発表準備中である。以上により、小脳モジュール構築とその動作機構の解析に関して一定の成果をあげた。
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