本研究の目的は2型糖尿病の分子遺伝学的理解のために、優れたモデルラットを開発することである。その研究内容は、大きく2部から構成される。一つは、OLETFラットとヒト2型糖尿病遺伝子解析(遺伝子名:IGF2BP2、及び、TOF7L2)の知見を用いて、より優れた疾患モデルラットを開発すること。もう一つは、IGF2BP2、及び、TOF7L2のラットホモログのゲノム解析を行うことである。前半部は、現在バイオリソースプロジェクトで必要系統を準備中であり、次年度には本格的にダブルコンジェニック系統作成に向けて交配が始まる見通しがついた。後半部について、両遺伝子の配列決定をおこなった。我々がこれまで遺伝解析、及び、今回の疾患モデル系統作成に用いるOLETFラットとF344ラット(野生型)について、遺伝的多型の有無を検討した。TCF7L2遺伝子については、exon領域1377bpの配列で、系統間の多型は見いだされなかった。IGFBP2遺伝子については、同じくexon領域1542bpの配列で、2箇所1塩基置換多型(exon4と8)を同定した。しかしながら、どちらの変異もアミノ酸置換を伴わないサイレント変異であったため、疾患原因変異とは考えにくい。一部、両遺伝子のintron領域の配列を比較したが、これまでのところ多型は同定されていない。 現在、次年度に向けてリアルタイムPCR法を用いてこれら二つの遺伝子の発現解析を進めている。疾患モデル系統はこれらの遺伝子のOLETFアレルを含むものであり、発現解析はその基礎データとして重要で、あると考えられる。
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